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書き仕事のかたわらで綴る、上田真之介オフィシャルブログ。(短縮アドレスはw.kbst.net)←URL冒頭のwはひとつです
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2011-12-23

スタートライン

時の大人たちが、
時の中学生に描かせようとした未来は、
少なくとも明るいものではなかっただろう。


80年代前半生まれ世代が
中学生かその前後だった頃の
「3年B組金八先生」。
(第4シリーズ/1995年10月~96年3月)

主題歌はスタートライン。



歌詞(リンク)はこうある。

今 私達に大切なものは
恋や夢を語りあう事じゃなく
一人ぼっちになる為の
スタートライン
(中略)
向こうの岸辺はあんなに明るく
町の灯が夜を焦がすのに
微かな星の光を探して
闇を選んで走る人がいる
今 私達に必要なものは
光溢れる明るい場所じゃなく
闇に向かって走り出す為の
スタートライン

中学生に浴びせるには
厳しすぎる言葉が並ぶ。

経済の低成長が決定的になった現代では
“みんな違ってみんないい”とか、
“個性”とかの言葉で
中学生を着飾ってやることは
できるかもしれないけれど、
当時はまだ下がるのか上がるのか、
死ぬのか生きるのか、
きっと分からなかったんだろう。


95年には阪神大震災も起きている。


急成長の残り香と、
先の見えぬ闇。


必要なものは
光溢れる明るい場所じゃなく...

そんなことを、
中学生に対して平気で言える時代が――
平然と言わなければ保てなかった時代が
確かに15年前にあったんだろう。


時の大人達が、時に中学生たちに
どういう未来を描かせようとしていたのか、
今となっては知ろうとは思わないけれど、
どんなに悲惨な言葉を掛けられようと、
どんなに過去にすがる大人の言葉に傷つこうとも、
もがきながら、時代を這うように
私たちは生きてきた。


今となっては失われた20年というが、
失われるかさえ分からなかった
厳しい20年のスタートライン。

あの時に走り出した私たちは
恋や夢をどれだけ語ってきただろうか。
光に溢れる場所を
大真面目に探してきただろうか。


一人ぼっちになる為のスタートライン

その言葉のとおりだったのかもしれない。

僕らの笑顔の向こう側には
その前の世代にも、その後の世代にもない
波の立たぬ孤独の深淵があり、
夜明けを知らぬ時代の峡谷がある――。

美化するわけでも、被害妄想にふけるわけでもなく、
それは事実なのだと思う。

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